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千葉市、市原市、茂原市のオーナーの皆様、こんにちは。
千葉市中央区のくるり動物病院にとなです。
今回は外耳炎についてお話しいたします。
犬の耳は、外耳、中耳、内耳の3つの部分から構成されています。
耳の外から見える部分、三角形などの形をした突出した部分を耳介といい、耳の入り口から鼓膜までの管状構造(耳の穴)を外耳道といいます。
耳介と外耳道を外耳と呼び、この部分に炎症を起こす病気を外耳炎といいます。
犬の外耳道は、L字型をしており、耳の入り口から縦方向の垂直耳道、その奥には、鼓膜まで、横方向に延びる水平耳道があります。外耳道の長さは3~7㎝、太さは0.3~0.8cmです。
外耳道の皮膚には、耳垢腺とも呼ばれる汗腺や脂腺があり、そこから分泌された汗や脂質が皮膚の表面にある角質と混ざり、耳垢となります。
耳垢には、外耳道内に常在する細菌や酵母菌のマラセチアなどが少数含まれています。
外耳炎の原因
犬の外耳炎は、さまざまな要因が単独で、もしくは複数の因子が関与して起こります。
アレルギー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎や食物アレルギー、もしくは接触性アレルギーにより、体の痒みと同時に両側の耳が痒くなる、もしくは、両耳だけが痒くなることもあります。
皮膚のバリア機能が低下し、感染しやすいため、外耳道に常在する細菌や酵母菌のマラセチアなどによる感染を繰り返すこともあります。
異物
草むらを探検することが好きなワンちゃんでは、イネ科植物の穂の先端部などが耳の中に入って取れなくなることがあります。また、草や石などが入ってしまうこともあります。
異物が耳に入ると、突然、しきりに頭を振り、異物が入ったほうの耳を痒がります。
感染症
耳の中に常在する細菌やマラセチアにより感染を起こすことが多くあります。
また、ミミヒゼンダニという寄生虫が耳の中に感染することもあり、耳を激しく痒がり、黒色の耳垢が増えてきます。(ミミダニ症)
それ以外にも、皮膚糸状菌やニキビダニなどにより感染を起こすこともあります。
耳の構造
以下のような犬種では、外耳炎を起こしやすい傾向がみられます。
・生まれつき耳道が狭い:パグやチワワなど
・外耳道に被毛が生えやすい:プードルやシーズー、マルチーズなど
・耳道内の耳垢腺が多い:コッカ―スパニエルやラブラドールレトリーバーなど
・垂れ耳:コッカ―スパニエル、シーズーなど
そのほか
不適切な耳のケア、内分泌の病気や脂漏症、腫瘍や炎症性ポリープ、免疫介在性疾患など、いろいろな要因が関与して外耳炎を起こすことがあります。
外耳炎の症状
一般的な外耳炎の症状は以下のとおりです。
・耳を痒がる
・頭を振る、耳を床にこすりつける
・耳の中や周りが赤くなる
・黄色や黒色、茶色の耳垢が増える
・耳に痛みがあるため触られるのを嫌がる
・耳が臭くなる
外耳炎から二次的に起こす症状
・耳血腫:耳を激しく掻くことにより、耳介の特に内側に血種ができてしまいます。
・首を傾ける(斜頸):外耳炎が悪化して、中耳まで炎症が及ぶとこのような症状がみられます。
・耳道の肥厚と閉塞:重度の外耳炎を何度も繰り返すと、耳道の壁が分厚くなり、耳道が狭くなります。さらに悪化すると外耳道が塞がり、手術が必要になることもあります。
外耳炎の診断
外耳炎を診断するには、耳鏡という器具を使って外耳道の中を観察し、外耳道内の腫れ、耳垢の量や色、腫瘤(いぼのような膨らみ)や異物の有無などを確認します。
耳垢の量が多く、感染が疑われる場合には、耳垢を綿棒などで採取し、顕微鏡で観察する耳垢検査を行います。この検査では、細菌やマラセチアによる感染、ミミダニなどを確認することができます。
重篤な外耳炎や、外耳炎を何度も繰り返す、治療をしてもなかなか良くならない場合には、原因菌を特定し、その菌に効果的な抗菌薬を判定するため、耳垢の細菌培養試験・薬剤感受性試験を行うこともあります。
外耳炎の治療
外耳炎の基本的な治療は、外耳道の洗浄と点耳薬になりますが、腫れや痛みが重度の場合には、内服(もしくは注射)の抗菌薬や抗炎症薬などを使用してから、耳の治療を行うこともあります。
外耳道の洗浄
外耳道内に耳垢が溜まっている場合、鼓膜の損傷がなく、重度の痛みや耳道内の腫れがなければ、外耳道の洗浄を行います。
耳垢を柔らかくする成分を含んだ洗浄液や生理食塩水などで、できる限り耳垢を除去します。
点耳薬
点耳薬にはいろいろな種類があります。
炎症の程度および感染原因、ご自宅での点耳が可能かどうかにより、最も適当な点耳薬を選択します。
抗菌薬(抗生物質)・抗炎症薬などの内服薬・注射
腫れや痛みが強い重度の外耳炎では、外耳道を洗浄することが難しいため、まず、全身性(内服もしくは注射)の抗菌薬や抗炎症薬を使って治療を行います。重度のマラセチア感染に対しては、抗真菌薬を使うこともあります。
その他
ミミヒゼンダニによる感染に対しては、耳の治療と並行してミミダニ駆除も行います。
異物に対しては、外耳道を傷つけることなく簡単に除去できるものであれば、すぐに処置できますが、難しい場合には、全身麻酔もしくは鎮静下での除去処置が必要になることもあります。
そのほかの原因や、耳血腫などの二次的症状に対しては、耳の治療と並行して、各原因・病状に適した治療を行います。
おわりに
犬の外耳炎のおよそ半数近くはアレルギー性皮膚炎に起因しているという報告があります。アレルギー性皮膚炎が原因の外耳炎は、再発を繰り返すことが多いため、定期的な耳のケア(外耳道のお掃除や過剰な毛の処理など)を欠かさないよう心がけましょう。