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千葉市、市原市、茂原市のオーナーの皆様、こんにちは。
千葉市中央区のくるり動物病院にとなです。
今回は犬の膀胱炎についてお話しさせていただきます。
膀胱炎は、細菌感染などにより膀胱に炎症が起き、頻尿や血尿などの症状を示す、犬によくみられる病気です。
膀胱炎の原因
犬に膀胱炎を起こす主な原因は細菌感染です。およそ14%の犬が一生涯のうちに最低1回は細菌性膀胱炎を起こすといわれています。
そのほかにも、膀胱結石や膀胱の腫瘍などにより膀胱炎を起こすことがあります。
細菌感染(細菌性膀胱炎)
犬における細菌性膀胱炎は、お尻や消化器に常在する大腸菌やブドウ球菌が、膀胱からおしっこの出口(尿道口)までの通り道である尿道を介して膀胱に感染、炎症を起こし、発症します。
このタイプの膀胱炎は雌犬に発症することが多く、その理由は、雌犬の尿道は雄犬よりも太いこと、また、尿道口は肛門の近くにあり、糞便中の消化器常在菌が尿道に入り込む可能性が高いことなどがあげられます。
たとえ膀胱内に細菌が入ってしまっても、通常は定期的な排尿により、膀胱内の細菌は尿とともに排出されます。しかし、あまり水を飲まないため十分な尿が作られず、排尿回数が極端に少ないワンちゃんや、日常的におしっこを我慢してしまうワンちゃんでは、膀胱に尿が長い時間溜まり、細菌が繁殖し、感染を起こしてしまうことがあります。
また、免疫機能を低下させる病気の罹患もしくは薬剤の服用歴や、おむつの使用などが関与することもあります。
膀胱結石(尿石症)
膀胱結石も犬によくみられる膀胱炎の原因です。
犬の膀胱結石は、ストルバイトやシュウ酸カルシウム、尿酸塩、シリカなど、尿中のミネラル分が結晶化し、さらに大きくなり結石となりますが、そのメカニズムは明らかにされていません。
犬に多くみられる結晶は、ストルバイト(全体のおよそ45%)とシュウ酸カルシウム(全体のおよそ45%)です。
犬のストルバイト結晶は、尿路系の感染に続発することが多いのですが、そのほかの結晶は、フードに含まれるミネラル分のバランスや尿の濃度、pHに関与すると考えられています。
その他
その他には、内分泌疾患や前立腺疾患、膀胱の腫瘍やポリープなどの病気が関与し、膀胱炎を起こすことがあります。このような要因では、膀胱炎を繰り返すことが多く、二次的に細菌性膀胱炎を起こすこともあります。
膀胱炎の症状
膀胱炎にかかると、以下のような症状がみられます。
・頻尿:何度もトイレに行く、(少量の)おしっこを何度もする。
・血尿:尿の色が赤い、茶色い、濃い黄色になることもあります。
・排尿障害:おしっこがなかなかでない。
・不適切な排尿:トイレ以外のところでおしっこを漏らしてしまう。
膀胱炎の診断
膀胱炎が疑われたら、腹部の触診、尿検査やレントゲン検査、超音波検査(エコー検査)などを行います。
尿検査では、尿中の血液や細菌、感染・炎症に伴う白血球などを確認します。
尿を採取する方法は、ワンちゃんが排尿する際に採取する自然排尿法、尿道にカテーテルを入れて採取するカテーテル採尿法、お腹から針を刺して膀胱内の尿を採取する膀胱穿刺法があり、細菌の有無を判定するためには膀胱穿刺法が一番正確な結果を得ることができます。ただ、尿が十分に溜まっていないと採尿することはできず、お腹に針を刺す検査なので、特に嫌がってしまうワンちゃんではリスクを伴います。
また、原因菌を特定し、その菌に効果的な抗菌薬を選択することができる細菌培養試験・薬剤感受性試験を必要に応じて行います。
レントゲン検査では、膀胱や尿道などに結石はないか、また、腎臓や膀胱などの異常を確認することができます。結石の種類によっては、レントゲン検査で確認することはできませんが、ワンちゃんに多いストルバイト結石やシュウ酸カルシウム結石であれば、確認することができます。
また、超音波検査(エコー検査)では、膀胱の壁が炎症により分厚くなっていないか、膀胱内に結石や腫瘍はみられないかなどを確認することができます。
膀胱炎の治療
細菌性膀胱炎
細菌性膀胱炎に対しては、抗菌薬を使った治療が必要になります。まず、膀胱炎の原因になりやすい菌に効果的な抗菌薬を使い治療を行います。効果が認められなければ、細菌培養試験・薬剤感受性試験を行い、最適な抗菌薬に変更します。
もし、コスト面で問題がなければ、そのような試験をはじめに行ってから抗菌薬を選択すると、より早く効果的な治療を行うことができます。
膀胱結石
ストルバイトによる結石の場合には、療法食に変えることで、結石を溶解できる可能性があります。また、ストルバイト結晶・結石は、尿路感染に起因することが多いため、尿検査、できれば細菌培養試験・薬剤感受性試験を行い、最適な抗菌薬での治療も必要です。
シュウ酸カルシウムが原因の場合、療法食で結石を溶解することはほぼできません。そのため、特に膀胱内の大きな結石は、手術で除去しなくてはなりません。
その他
その他の原因よる膀胱炎に対しては、各原因と膀胱炎の治療を行います。
おわりに
膀胱炎は、ワンちゃんに比較的よく起こる病気です。
抗菌薬等の投薬だけで良化することもありますが、検査をしっかり行い、原因を究明しておくことで、再発を防ぎ、結石や腫瘍などを早期に治療することが可能になります。
また、ワンちゃんは膀胱炎以外にも尿路系の病気を起こすことが少なくありません。そのため、普段からおしっこの量や色、回数などに注意してみましょう。